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※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2022年7月27日) photo-top

高知銀行「月67時間」の業務削減、
「郵送による本人確認手続き」をやめた効果が凄い?

株式会社高知銀行

デジタル営業部 副部長 (兼)DX戦略室 室長 曽我 太様
パーソナルサポート部 主任業務役 柏木 雄一様
デジタル営業部 副業務役 北村 光清様
(所属は、取材日時2022年6月当時のものになります)

株式会社高知銀行(以下、高知銀行)様は、高知県高知市に本店を置く第二地方銀行。通称「こうぎん」という名で親しまれています。『ベスト・リージョナル・コラボレーション・バンク』として「地域の価値向上に貢献する金融インフラ」となることを目指して地域経済活性化のための活動を積極的に行われております。また、金融DXも推進されており、顧客満足度向上に繋げるべく、ローン申請プロセスにかかる業務を削減するために「eKYC本人確認サービス」をご導入いただきました。

四国の第二地方銀行・高知銀行では、顧客満足度(CS)を高めるために金融DXを推進する中で、いくつかの課題を抱えていた。中でもローン申請プロセスは、申請者の真正性を確認するための本人確認手続きが何段階かに分かれており、これによって時間と手間が掛かっていた。なぜ、同行はこうした課題を解決し、ローン申請プロセスにかかる業務を67時間も削減することができたのか。また手間のかかるシステム改修をどのようにして回避ができたのか。

「本人確認手続きの手間」が顧客満足度を下げる?

 高知銀行では、預金や投資信託、各種ローンなど、取り扱う商品の契約手続きに関して、店頭窓口に加えてWebやスマホアプリなどのオンライン上のチャネルを設けている。

 このうち、オンライン上のチャネルを通じた手続きについて、さらなる顧客満足度(CS)の向上が課題となっていた。特に、Webサイト上に設けているローン申請手続きのフローに課題があることを感じていたという。高知銀行パーソナルサポート部の柏木雄一氏は次のように振り返る。

「お客さまが本人確認のための写真データや書類をご自身でアップロードし、それを受け取った我々が書類をチェックした後に、ローン会社による審査が行われます。その後、審査が承諾になれば、数日後に"本人限定受取郵便"が届き、それを申請者であるお客さまが受理し、本人であることの確認が終了した段階でローン手続きが完了するという流れになります。お客さまからすると手続きにかかる期間が長く、これが当行との取引をためらう理由にもなりかねません。改善が急務と言える状況でした」(柏木氏)

 また、運営する銀行サイドとしても顧客の本人確認の度に本人限定受取郵便を郵送する業務が負荷となっていたほか、書類郵送コストや人的負担もあるというデメリットがあった。同行は、こうした課題をいかに乗り越えたのだろうか。ここからは高知銀行の取り組みを解説する。

手間が掛かっていた申請フローにおける「本人確認」の課題

 高知銀行が抱えていた本人確認フローの最大の問題点は、ローンの申請者が本人であることを確認するために郵送する「本人限定受取郵便」の存在だろう。これに関する業務負担は、具体的にどの程度になるのだろうか。

 高知銀行 デジタル営業部 副業務役 兼 よさこいおきゃく支店副業務役の北村光清氏は、「現在の受付センターは5人体制ですが、1通あたり10分の処理時間として、月に300~400件のネット受付があるため、約4000分(約67時間)の工数がかかっています」と説明する。

 また、顧客は休日に申請手続きを行うことが多く、土日祝日を挟むと手元に本人限定受取郵便が届くまでにさらにタイムラグが生じてしまう。すると、本人確認の手続きが完結するのに、早くて数日、遅い場合は10日ほどかかってしまう。また、本人限定受取郵便は、受け取るのが本人でないといけないため、不在であったりするとさらに時間がかかってしまう。こうした本人確認フローを簡素化し、効率化していく必要があったのだ。

 そこで高知銀行が目を付けたのが「eKYC」(electronic Know Your Customer)であった。これは口座開設やローン申請の際に必要な本人確認の手続きを電子的(オンライン)に行うものだ。これにより負担がかかっていた本人確認の手間や時間を軽減でき、顧客の離脱も防げる。

 とはいえ、高知銀行はeKYCのサービスベンダーを探すにしても、当初は知見が少なく苦労したという。たとえば、一口にeKYCソリューションと言っても「ブラウザ型」と「アプリ型」がある。ブラウザ型は自社サイトなどにアクセスし、ブラウザ上で本人確認を進めるもので、自社サイトとeKYCシステムを連携する。一方、アプリ型は本人確認用アプリをダウンロードし、アプリ側で本人確認を行う形式だ。

 高知銀行 デジタル営業部 副部長 兼 DX戦略室室長曽我太氏は、「我々は白紙の状態だったので、eKYCの導入に向けて、複数ベンダーにヒアリングを実施しながら、各社のソリューション情報の整理をしていきました。ベンダーさんの選定段階で、銀行システムとの接続性や費用面も含めて検討することになりました」と当時を振り返る。

システム改修が不要で、本人かどうかを高精度で診断できる理由

 検討の結果、最終的に高知銀行が選んだのが、エムティーアイの「eKYC本人確認サービス」であった。同社のソリューションは、前出のeKYCの分類でいうとブラウザ型のサービスとなる。

リアルタイムで本人確認が可能なエムティーアイの「eKYC本人確認サービス」の概要と仕組み。ポラリファイの高精度の顔認証エンジンを活用し、別人のなりすましを自動的に検知

 曽我氏は「もちろんソリューション選定にはコスト面も大事ですが、我々のシステムと連携する際のAPI開発が必要ないという点が一番のポイントになりました。実は、どこのベンダーさんに相談しても、軒並みAPI連携をベースとした開発で時間とコストがかかるという話でした。ところがエムティーアイさんの場合、我々のパラメータ情報を提供するだけで、システム改修も少なくて済み、汎用性も高くて容易に導入できるという話でした」と、同社のソリューションを選んだ決め手を強調する。

 eKYC本人確認サービスの流れとしては、申請用のWebサイトから、エムティーアイのeKYC本人確認サービスに入り、申請者が本人確認用書類(表裏斜め)とセルフィ―の自撮り写真をスマートフォンで撮影してアップロードするだけだ。

実際の手続きまでの流れのイメージ。わかりやすいUIUXで簡単に本人確認が完了できて便利だ

 エムティーアイのサービスの大きな特徴は、本人確認の精度が非常に高い点だ。本人確認書類の顔画像と、自撮りした顔画像が同一人物であることをシステム側で確認してくれる。従来のように、管理画面上でオペレータが目視でじっくり本人かどうかを見比べる必要もなく、一致/不一致といった表示判断が自動で可能になり、後続の審査業務もスムーズになるのだ。

ローン申請プロセスが全体で約3日間も圧縮、さらに横展開も期待

実際のeKYC本人確認サービス導入に当たっては、特に問題はなく円滑に進んだという。コロナ禍で直接の打ち合わせができなかったが、リモート会議で何回か分かりやすく導入時の疑問点も説明してもらった。

 柏木氏は「開発中・開発後も、フロント側を改修している他ベンダーさんとうまくコミュニケーションを取っていただき、こちらに情報共有していただきました。また運用の中で、Webフォームから個人に紐づける情報に関して不明な点がありましたが、こちらもすぐにレスポンスしていただけたので、運用側としても大変心強かったです」とエムティーアイのサポート面を評価する。

 本サービスの稼働は、2022年6月14日に始まったばかりだが、顧客としても従来のように本人限定受取郵便が不要になり、オンラインで本人確認の処理が完結できるため、大幅に時間を短縮できるものと期待しているそうだ。

「このように申請処理業務の中で、本人確認業務が短縮できることによって、全体で3日間程度の処理時間の圧縮が可能になるものと予想しています。また後続の本部側の業務処理も、翌日実行という形にしていくことで、より迅速な体制が整うでしょう」(曽我氏)

 eKYC本人確認サービスの利便性が、営業店や顧客側にも認知されていけば、さらに銀行全体の処理業務も効率化されるはずだ。そこで今後は、店頭に来てローン申請を行う顧客に対しても、できるだけWeb申請を推奨していく方針だという。

 「これで営業店舗の負担も軽減できるものと期待しています。お客さまも本人確認のために店舗にわざわざお越しいただく手間も省けてラクに手続きができます。結果的に、我々もお客さまのニーズに迅速にお応えしていくことにつながると思います」と北村氏は自信をみせる。

 高知銀行では、ローン申請のみならず、さまざまな商品やサービスなどの非対面申請業務に対しても横展開していき、より進んだ金融DXを推進していく構えだ。その際にもエムティーアイのeKYC本人確認サービスが大きな武器になるだろう。

※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2022年7月27日)

高知銀行 曽我様、柏木様、北村様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。

株式会社高知銀行
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https://www.kochi-bank.co.jp/loan/webloan/index.html?grid=global_menu
取材日時:2022年6月
取材場所:高知銀行本店(高知県高知市堺町2番24号)