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※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2022年5月9日) photo-top

なぜ、大樹生命は「作りこまれた社内システム」のスマホ対応を“簡単に”実現できた?

大樹生命保険株式会社

DX 戦略部 DX 戦略グループ 河野 剛士様

大樹生命アイテクノロジー株式会社

開発本部 営業フロントシステムグループ 岩石 晃様
(所属は、取材日時2022年3月当時のものになります)

大樹生命保険株式会社(以下、大樹生命保険)様は、1927年の創業以来、「いつの時代も、お客さまのためにあれ」という精神に基づき、お客さま本位の業務運営を推進されております。日々あらゆる現場で営業活動を行っている営業職員がお客さまへ迅速な対応ができるよう、スマホからも社内の業務システムを利用できる環境を整備する一環として2021年10月に「モバイルコンバート エンタープライズ」をご導入いただきました。場所を選ばず、お客さまからの問い合わせにもすぐに対応ができるようになったことで、営業効率の向上を実現しました。

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大樹生命は保険会社ならではの特殊な社内システムのスマホ対応をどのように進めたのか
(Photo/Getty Images)

2016年に日本生命保険との経営統合により新体制となった大樹生命保険(旧三井生命保険)は、2018年から営業担当者の生産性向上につなげるため、自社の業務システムのスマホ対応に取り組み始めた。スマホ対応を進めるにあたり課題となったのが、保険会社ならではの特殊な社内システムの変換だ。一般的に、作りこまれたシステムの改修には多大なコストも時間もかかってしまうが、同社はこうした問題をどのように解決し、スマホ対応を実現したのか。

社内業務システムのスマホ対応における課題とは

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大樹生命保険は、2022年で95年を迎える長い歴史を持った生命保険会社だ。2016年4月、前身の三井生命保険は日本生命保険と経営統合し新体制を発足。その後、2019年4月に社名を現在の大樹生命保険に変更し、現在に至っている。

大樹生命保険には全国に約8000名の営業職員がおり、お客さまへ死亡保険、医療保険、年金保険などの保険商品の提案・サービスの提供を行っている。営業職員は、日々あらゆる現場で営業活動を行うため、常にPCやタブレット端末を開いて作業ができるような環境にあるわけではない。そうした営業職員の生産性向上には、スマホからも社内の業務システムを利用できる環境が必要ではないかとの声が上がったのだ。

大樹生命のシステム関連会社である大樹生命アイテクノロジー 営業フロントシステムグループの岩石晃氏は、「当社のシステムは、メールシステムを1つ例に挙げても、ほかの業界で使われている一般的なメールシステムとは異なります。営業の募集活動で保険商品を扱う際には、お客さまに誤解を与えないような説明をする必要があるため、上司や本社がメール内容をコンプライアンス面からチェックする仕組みも盛り込まれています。このように生命保険業ならではの特殊なシステムの仕様がスマホ対応のハードルになっていました」と語る。

同社はこうした課題をいかに乗り越え、スマホ対応を実現したのだろうか。同社の取り組みを紹介する。

コストをかけず、迅速に既存システムをスマホ対応させたいのだが……

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大樹生命では、もともと営業職員が営業活動などで活用するスマートデバイスとしてタブレット端末を配布していた。その端末の保守切れに伴い、タブレット上で利用していた業務システムの刷新も始めることになった。その際、より迅速なお客さま対応と、営業職員の活動効率を高めるため、営業職員がスマホでも業務システムを利用できるような環境を整備する検討も進められた。このような背景から、スマホ対応の可能なシステム構築に向けたプロジェクトがスタートしたという。

今回のプロジェクトマネージャーを務めたDX戦略部 DX戦略グループ 河野剛士氏は、「タブレットは、外出先でお客さまに画面を見せながら保険商品を説明する際に使いますが、お客さまの申し出に迅速に対応したり、コールセンターからの情報連携内容などを見たり、情報を確認するためには、やはりスマホも必要だと考えました」と振り返る。

特に、これまでメールシステムはタブレット対応のみであり、スマホ対応はされていなかった。そのため、タブレットから見ていた画面を、同じような形でスマホでも見られるようにすることが本プロジェクトにおいて特に重要になったという。

岩石氏は「まず営業職員がスマホでも違和感なく利用できる形にしたいと考えていました。当初はメールシステムをスクラッチで開発することも想定しましたが、これまで蓄積してきた特殊な仕組みのノウハウを継承する必要があり、コストをかけずに迅速に開発できる方法がないものかと検討していたのです」と説明する。

そうした中で、有力な選択肢として浮上したのが、既存システムをそのまま活用しながら、タブレット向けのユーザーインタフェース(UI)をスマホでも利用しやすく変換できるエムティーアイの「モバイルコンバート エンタープライズ」であった。

特殊な既存システムでもスマホ対応ができる理由とは

モバイルコンバート エンタープライズは、既存資産の業務システムやパッケージなどを、スマートデバイスにスピーディに対応させるソリューションだ。システム画面をスマホ用に最適なレイアウトに変換し、良質なUIデザインを短期間・簡単に構築できるという特徴がある。

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モバイルコンバート エンタープライズは、お客様の環境内に構築してご利用いただく、社内業務システムのスマートデバイス最適化変換サービスだ。「セキュリティポリシーでASPサービスが導入できない」「社内承認フローや勤怠システムなどの業務システムをスマートデバイス対応したい」などの場合に最適である。

似たような変換ソリューションは他社にもある。しかし、いくつかの製品から大樹生命がエムティーアイのモバイルコンバートを選んだ決め手は明確だった。それは、Webサイトの変換だけでなく、同社のような社内業務システムの変換実績も数多くあった点だ。セキュリティ重視の保険・金融系業務システムのサーバにも安心してインストールできた。

河野氏は「テンプレート変更も柔軟に対応できて、メンテナンスが容易である点や、そのテンプレ開発についてもエムティーアイさんから支援をいただけたことも大きな決め手になりました」と説明する。

前述のように同社のメールシステムは保険業界ならではの特殊なものだ。たとえば、業務で利用するWebブラウザーにしても一般的なものではなく、安全性を担保するためにセキュアなブラウザーを採用している。そこで変換時にシステムの相性も懸念点だった。

岩石氏は「いざコンバートしようとしてもうまく変換できなかったというトラブルが発生しないよう、エムティーアイさんが実際にデモ版を用意してくれ、環境を試し不安を解消できた点も良かったです。こういったフィジビリティ(実行可能性)について重視していただいた点も決め手の1つになりました」と評価する。

2018年の事前検討からエムティーアイのエンジニアが大樹生命を訪問し、要件定義や業務システムとの連携、テンプレートなどに関して、ユーザー部門やシステム部門と綿密な打ち合わせを実施した。画面変換のトライアルも行って、フィジビリティを確認後、2019年から本格的にプロジェクトが始動した。

「エムティーアイさんには、画面変換の要件もヒアリングしていただきました。スマホ対応にあたり、スマホ側にすべての機能を盛り込むのではなく、利用者となる営業職員のユーザビリティを意識し、外出先で必要となる機能に絞り込み、実際の営業活動の現場で役立つシンプルな構成をご提案していただきました」(岩石氏)

営業職員の立場に立つと、腰を据えて作業したいならタブレット端末で作業をするほうが良い。一方、電車での移動中など、すきま時間で作業するなら、素早い操作ができるスマホのほうが便利だろう。そこで、スマホ側にはメールのテンプレートを呼び出す機能など、利用頻度の高い機能だけを残すことによって利便性を高めたという。

全営業職員の約8割、6000名以上のスマホ対応を実現

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このようなエムティーアイ側の丁寧な事前サポートもあり、導入はスムーズに進み、他プロジェクトと併せて2021年10月、営業職員向けの専用スマホアプリが無事リリースされた。モバイルコンバートを導入したことで、スクラッチ開発に比べて非常に低コストで開発できた上に、リリース後も安定的に稼働・運用できているという。

「スマホは自前のBYODなので、アプリケーションの利用は営業職員それぞれの判断に任せていますが、すでに全営業職員の約8割に利用されており、利用者からの評判も上々です。特に、PCやタブレットを利用しづらいシーンで役立っています。テキスト入力などにキーボードソフトウェアを必要とするタブレットは、場所によっては起動しづらいシーンもありますが、日常的に使い慣れているフリック入力でテキストを入力できるスマホであれば、たとえばお客さまからのメールの問い合わせなどに対して場所の制約を受けることなく迅速に対応できます。実際に営業職員の声を聞くと、営業効率はかなり高まっているようです」(河野氏)

大樹生命の考える「新時代の顧客体験」

これまで大樹生命をはじめとした保険会社の多くは、対面営業が基本であったが、この2年間のコロナ禍によって営業スタイルは変化しており、新たな顧客体験の在り方を模索している状況にある。こうした中、同社では2023年度までの中期経営計画で、環境の変化を踏まえたお客さま対応の品質向上を図っていく意向だという。

「非対面でも対応可能な手続きなどについては、Web会議などのリモート対応の選択肢を提供することで、お客さまのニーズに合わせてコンタクトができるようにしています」(岩石氏)。

たとえば、保険税務・相続などの専門知識を要する分野では、営業とともに専門スタッフがリモートで同席することで、お客さま対応の品質向上を図っている。昨年10月からはオンライン相談窓口を開設し、相談予約をWeb上で完結できるようにした。同11月からはビデオ通話と画面共有を用いた非対面の新契約手続きの取り扱いも開始している。

今後も同社は、エムティーアイのモバイルコンバートなどのツールを活用し、デジタル化とIT利活用を促進することで、お客さまニーズによりそいながら、さらなる利便性を感じてもらえるような施策を打ち出していくという。

※本稿は、ビジネス+ITからの転載記事です。(掲載日時:2022年5月9日)

大樹生命保険 河野様
大樹生命アイテクノロジー 岩石様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。

該当サイト名:大樹生命保険様社内システム
・メールシステム
取材日時:2022年3月
取材場所:オンラインにて取材実施
撮影:大参久人

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