受付時間:平日9:00~17:00

logo BtoBソリューション

※本稿は、キーマンズネットからの転載記事です。(2020年9月15日掲載) photo-top

ライオンのスマホアプリ開発秘話、
“人間中心設計”で使いやすいアプリに

ライオン株式会社

ビジネス開発センター ビジネスインキュベーション 副主席部員 石田 和裕様
ビジネス開発センター ビジネスインキュベーション 尾本 さよ様
(所属は、取材日時2020年7月当時のものになります)

ライオン株式会社様は、洗剤・石鹸・歯磨きなどトイレタリー用品、医薬品、通販、 ペット用品、化学品を手がける日本の大手生活用品メーカー。「今日を愛する」、生活者が愛する大切な“今日”という日々のくらしを、私たちも愛し、そこに貢献していくことを企業スローガンとされています。ライオン様の長年のオーラルケア研究で培った知見を生かし、口臭に対するケアを必要とする人の不安軽減を目的に、口臭リスクレベルを手軽にセルフチェックできるスマートフォン用口臭ケアサポートアプリの開発をご支援させていただきました。

舌の画像を解析して口臭のリスクを判定するというスマートフォン用アプリ「RePERO」。“人間中心設計”で作られ、利用者からも好評だ。アプリ開発は専門外だったライオンはどうやって開発を進めたのだろうか。

ビジネスパーソンにとって口臭に対する不安は積極的なコミュニケーションを阻害する要因となり、結果として営業機会の損失や顧客満足度の低下につながる可能性がある。そこでライオンは、日々の業務の中で特に高いホスピタリティーが求められると想定される接客、営業スタッフを主なターゲットとして、口臭の不安を低減して自信をもって働いてもらうことを目指すサービス開発を始めた。

舌の画像を分析することで口臭のリスクを推定できることは、同社の研究によって明らかになっていた。開発当初は口臭の不安を低減するアプローチとして、息を吹きかけて口臭リスクを可視化するセンサー型デバイスの開発も検討したが、利用者が口臭をチェックする専用デバイスをわざわざ購入して持ち歩くのは現実的ではない。そこで、スマートフォンカメラを活用し、画像から口臭リスクを可視化するスマートフォンアプリの開発を検討した。

エムティーアイの豊富なアプリ開発実績、事業化への支援体制を評価

ライオンはまず、アプリを開発するためのパートナー企業を探した。同社がパートナーとして選んだのはエムティーアイだった。

ライオンはなぜエムティーアイを選んだのか。ライオンのビジネス開発センターの石田氏(所属は取材当時のもの)は次のように話す。
「自社でのアプリ開発の経験が少なかったことから、パートナー選びには『アプリ開発の実績が豊富であり、サポート体制が充実していること』『単なるアプリ制作の委託で終わらず、その後の運用保守も支援いただけること』を重視しました。そのような観点からヘルスケア分野で女性のための健康管理アプリ『ルナルナ』をはじめ実績が豊富なエムティーアイさんは非常に魅力的なパートナーと感じました」

選んだ理由は実績だけではない。石田氏は次のように続ける。

「エムティーアイさんの担当者はこちらの相談事項に対して局所的な対応をされるのではなく、こちらの依頼の意図もくみ取った上で開発の全体フローも俯瞰したバランスの良い提案をしてくれました。このように豊かな経験に基づいた適切な提案ができるだけでなく、こちらの相談を『自分ごと』として丁寧に対応してくれる担当者の熱意と、そこから感じられるエムティーアイさんの社風に感動したことも決め手となりました」

70種超の自社コンテンツを持つエムティーアイ、豊富な知見から顧客の要望に合わせてアプリを開発

ライオンとエムティーアイが組むことが決まり、実際の開発が始まる。

まず着手したのが利用者のニーズや課題意識の調査、企画を詰めるためのワークショップの開催だ。

エムティーアイが運営を支援し、ターゲット利用者へのインタビューを複数回実施。ペルソナを設定して一緒にカスタマージャーニーを描き、コンセプト案を利用者に提示して感触を確認し、アプリの設計を進めた。社内にUI/UXデザインの専門部隊を持つエムティーアイが、その強みを存分に生かし、一貫して開発を支援した。

エムティーアイは、ユーザーの使いやすさを第一とした「人間中心設計」の専門家による支援体制を提供している。支援内容は開発だけでなく、アプリ開発プロジェクトへの調査からファシリテート、設計、運用まで顧客視点に立ってプロジェクトを進行している。自社コンテンツは70種類を超え、豊富な経験と知見から顧客のアプリ開発を支える企業だ。

img-voice01
理想的なサービス体験を具現化するUXDプロセスに沿って設計している

理想的なサービス体験を具現化するUXDプロセスに沿って設計している《クリックして拡大》(出典:エムティーアイ)プロジェクトの中心人物でもあるライオンのビジネス開発センターの尾本さよ氏は次のように振り返る。

「ワークショップにはエムティーアイさんの開発担当者にも同席してもらい、利用者が欲しい機能と使いやすいデザインは何か、技術的にどこまで可能なのかを適宜判断してもらいました。エムティーアイさんは、使う人間を中心にデザイン設計を考える“人間中心設計”で提案をしてくれ、そこで得られたアイデアを基にインタフェースを設計しました。結果的に使いやすいアプリになったと思います。開発当初担当者間では、『アプリを継続して利用してキャラクターを育てたら親しみやすいのでは』といった思い付きのアイデアが複数ありました。実際に利用者と対話してみると、求められているのはもっとスタイリッシュな、シンプルで飽きの来ないデザインだということが分かりました」

こうして基本的な仕様は固まった。だが、それをスマートフォン用アプリとして仕立てるのはここからだ。アプリ自体の開発やAIによる画像分析システムとアプリの接続はもちろんのこと、利用者認証をどうするか、管理システムをどう設計するか、またAppleの「iOS」とGoogleの「Android」で異なるアプリストアへの登録申請の進め方など、技術的、事務的なプロセスは多岐にわたる。ここでは、エムティーアイの豊富なアプリの開発と運用のノウハウが存分に生かされた。

こうして完成した「RePERO」は、2018年10月の展示会「CEATEC JAPAN」でお披露目された。アプリの動作は次のようになっている。

利用者が自撮りをする形で、舌を出し、画面に表示されるガイドに舌の位置を合わせて撮影してアップロードすれば、ソフトウェアの機能を共有するAPIを経由してクラウドサーバ「NIFCLOUD」に構築されている画像分析AIに送られる。画像分析AIは口臭のリスクを分析し、5段階のリスク判定と段階に応じたオーラルケアに関する判定結果をアプリに送り返し、アプリがその情報を表示する。過去5回分の判定履歴も見られ、利用者は改善状況を確認できる。

img-voice02
UXを重視したデザインの「RePERO」画面キャプチャー

ライオンが狙うのは、アプリ利用者のオーラルケアへの行動変容だ。「アプリを導入してくれた法人の事業所には、舌の汚れを取るタブレット(錠菓)や舌専用のブラシも配布し、日々の口腔(こうくう)ケアの習慣を身に付けてもらう取り組みをしています」(尾本氏)

ライオンの目指すアプリ像を理解して開発する
エムティーアイならではの仕上がりに

「RePERO」の利用者からの評判は上々だ。ワークショップで練り上げた人間中心設計も成功し、アプリ利用者からは「シンプルなインタフェースで継続して使いやすい」という声が届いている。導入した企業からは、顧客とのコミュニケーションが活性化し、今では自身の健康管理や生活改善に積極的に取り組む従業員も増えたという声が寄せられている。

「RePERO」がユーザーからも好評なのは、エムティーアイがライオンのニーズを丁寧にヒアリングし、”共創”の体制を取りながら開発を進めたからこそ。石田氏は、アプリの開発を終えて運用段階に入った現在も、エムティーアイをパートナーとしたのは正しかったと確信している。なぜなら、利用者認証や管理の部分でも、エムティーアイの知見が生かされているからだ。

「『RePERO』の利用には専用IDを必要としますが、起動画面でのID認証のセキュリティレベルについてもエムティーアイさんのアドバイスを参考にしました。エムティーアイさんは簡易的なセキュリティのアプリから、金融業界向けの高いセキュリティ基準を求められるアプリまで幅広くご対応されています。今回の開発では当初からアプリの目的や用途に合わせてセキュリティ検討し、過不足ない仕様を設定できました。これが現在の運用効率化につながっていると思います」(石田氏)

また、事業として継続するにはアプリのアップデートや利用者への利用継続の施策も欠かせない。尾本氏は以下のように語った。

「今後も利用者へのアンケートやインタビューから改善点を抽出し、より多くの方がお口の健康に興味を持つきっかけとなるアプリになるようにブラッシュアップしていきたいです。今回の開発ではエムティーアイさんのご支援もあり、利用者にとって気軽に使いやすいアプリに仕上がったと思います。『RePERO』が狙い通り、口臭不安の低減やコミュニケーションの活性化につながり、積極的に口腔ケアに取り組む行動変容を促すポテンシャルを持っていることも確認できました。今後も顧客からの反響をもとに、より良いサービスにブラッシュアップしていきたいと思います。デジタル関連技術の進歩は非常に早く、私たちだけではついていけません。顧客のニーズにいち早くこたえるために、これからもエムティーアイさんのような専門家との連携が必要と感じています」

※本稿は、キーマンズネットからの転載記事です。(掲載日時:2020年9月15日)

ライオン株式会社 石田様、尾本様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。

ライオン株式会社
口臭ケアサポートアプリ: https://repero.lion.co.jp/
取材日時:2020年7月
取材場所:オンラインにて取材実施