カスタマーリレーション向上の強力な武器。
スマートフォン活用で叶える新しい顧客体験。
日本航空株式会社
Web販売部 Web・コールセンター企画グループ
草野 貴史氏
吉田 成枝氏
「日本航空株式会社(以下、日本航空又はJAL)」様は、1999年のi-modeの登場とともにモバイル予約をスタート、モバイル市場の黎明期から様々な取り組みをされていらっしゃいます。PC、ケータイ、スマートフォンなどマルチデバイスに対応したサービスを積極的に展開してきた同社が、2012年10月には路線ごとの機内食案内サイトへ『モバイルコンバート・プラス』をご導入(※)。2015年11月、訪日外国人客数の増加などを背景に、この度「JAL国内線航空券予約(英語版)ページ」へご導入いただき、スマートフォンサイトでの航空券予約の利便性向上を実現しました。
※機内食サイトリリース後の導入事例インタビュー(2013年6月取材)はこちら
日本航空様のサイト運営について
WEB事業を担当されている部署についてお聞かせください
我々、日本航空Web販売部は、「JALホームページ(jal.co.jp)」を企画・運営しています。24時間365日営業の直営店として、ホームページを一つのお店と考え、国内航空券や国際航空券、また、国内・国際のツアーや付帯事業で提携している商品などもラインナップとして取り揃えながら、一日大体、50万人超のお客様に毎日ご来店して頂いています。ホームページ経由での取り扱い額も年々右肩上がりで増えており、例えば国内線販売全体の取り扱いにおけるホームページ経由の割合は50%超、日本航空全体にとってもホームページは大きな販売チャネルになってきていますね。
WEB利用での航空券予約はかなり浸透していますよね。
そうですね。利用推移としてはここ5年くらい平均して増えていってますね。
どうしても航空券はご出張でビジネスマンの方に使われることが多いので、やはり会社のPCで手配するという方が一定数います。そのため、旅行の宿泊商品や物販などのように、スマートフォンの普及によって一気に伸びていくという傾向とは違い、やはりPC経由での予約がまだまだ主流と言えます。
その中でスマートフォンに期待する役割とは?
スマートフォンの活用は、売り場としてだけでなく、お客様とのタッチポイントとして、お客様との関係向上、いわゆるカスタマーリレーションズの取り組みとして今後更に核になっていくものと考えています。よりお客様を取り込んでいく、便利なサービスを提供し、よりJALを使っていただくというところの非常に強力なツールであることは間違いないと思います。
そういった意味でも我々が、いろいろな商品やマーケットに注力するWeb販売の中でも、スマートフォンというのはその活動の柱の一つに位置付けて取り組んでいます。
訪日外国人の伸びは話題となっていますが、海外ユーザの需要はいかがでしょうか。
マーケット全体でご存知の通り、国内は人口減少などで伸び悩んでいる中で、訪日外国人は非常に今、急速に伸びています。日本全体の訪日客数の目標としては、2000万人(※)ということで数年前の時点ではかなり高い目標という印象でしたが現在はそれに迫る勢いですよね。(※2016/4/19現在。15年度訪日観光客2000万人突破を4/20政府観光局が発表)
当然、海外発の航空事業としても非常に伸びていますし、訪日のお客様や、更にいえば国内にいらっしゃるイングリッシュスピーカーの方など、当然海外からの需要と合わせてマーケットが活性化するので、そういった需要と連動して取り組んでいくことが重要になってきます。
スマートフォンが世の中に出始めた頃から、スマートフォンサイトは勿論、アプリ等、我々も積極的にサービス提供をし、それもあってマーケットの拡大と会わせてスマートフォンを介した取り扱いも毎年、非常に伸びています。
アプリなど、以前からスマートフォン向けのサービス展開は積極的ですね
早くからカスタマージャーニーを意識したアプリのラインナップを揃えており、各タッチポイントでいろいろなアプリを介してのお客様とのコミュニケーションを目指してきています。
2015年に利用者数が飛躍した要因の一つでもあるのですが、2015年1月にアプリのデザインユーザビリティを一新するリニューアルを行ったことで、アプリだけでの取り扱い額が倍くらいに伸びたりと、アプリやサイトでユーザビリティを変えていくことが非常に重要だということがよく分かりました。今まで培ってきたユーザビリティの考え方を反映させて、より便利な形に改善することを意識しています。
モバイルコンバート導入の経緯
今回、「JAL国内線航空券予約(英語版)ページ」にモバイルコンバートプラスを導入いただいた理由とは?
訪日外国人の急増も背景として一番にありますが、一方で、今回の対象サイトはあくまでも国内線に限ったサービスになるので、訪日外国人のお客様に国内線を使っていただく規模感や、マーケットには限りがあると考えていました。
その中、フルスクラッチでゼロから構築していこうとなると、費用対効果の面で効率的ではないですし、まさにそれを解決してくれたのがモバイルコンバートプラスでした。
逆に、もしモバイルコンバートプラスがなかったらこのタイミングで、我々はこのマーケットに対して全く何も出来なかったとも言えます。
元々PCサイトがあり、そこでやっていることをそのまま世の中に、スマートデバイス向けにサービス提供できたということが、非常にありがたいと思っています。
スマホならではのUI、デザインもかなり意識して導入作業が進んだようですね
今回一番感じたことは、カスタマイズの自由度ですね、これが非常に高かったことが正直予想以上でした。
PCサイトで提供しているサービスをほぼそのままスマホに持ってくることが出来、且つスマホならではのデザイン性や、ボタンやフォントサイズなど、かなり細かく調整できたことが、非常に良かったです。具体的にいうと、例えばPCサイトの空席照会では日付を選択せずに幅広い日にちの金額をマトリックスで見せるような、外国人のお客様が好まれる独自のユーザビリティをPCサイトの方で提供しているのですが、そういったところが正直どこまで実現できるか不安はありました。機能ダウンもある程度覚悟していましたが、実際のところは、本当にカスタマイズが自由に出来、PCサイトでやっている表現がスマホでもここまで実現出来るのか、と驚きましたね。更に、スマホならではの動きでしたり、デザインイメージを変えていく点もフレキシブルで、本当にサイトをゼロから作っているのと同じくらいの感覚で進めていただき、カスタマイズの自由度は素晴らしいものだったと思います。
導入後の成果
リリース後の状況は、いかがでしょうか?
流入口を増やしたのが最近のため、数字に表れてくるのはこれからという状況ではあります。今はアクセス数がかなり増えてきているのは確認出来ているので、おそらく取り扱い額も自ずと想定通りに伸びるイメージでいます。その理由としては、訪日の外国人の方にとって一番大事なデバイスはやはりスマホなので、そこに対して「スマートフォン対応しました」というのは効果的なポイントだと考えていますし、PCの機能をしっかりとスマホで利用できる状態で、ユーザビリティ的にも最適化できているので、あとは流入口さえしっかりと作れれば、おそらく想定通りに行くだろう、と。とにかく、取り扱い額を上げていくことがミッションなので、そこを今後追っていきたいと思います。
ユーザの利用動向など、いかがでしょうか?
海外の方が、日本の国内線に乗る際の航空券の買い方は主に2パターンあり、国際線と一緒に購入するパターンと、日本に来てから国内線を購入するパターンですね。
海外のお客様は日本人と比べると長期で滞在するケースが多いですし、アジアの方が日本に住む知り合いや親戚を訪ねて来日されるケースも非常に多く感じます。
国内線英語ページのアクセス状況を見ると、インバウンドで需要が伸びている出発国、近場のアジアやオーストラリアからの利用がやはり伸びていますね。
新しいモバイル技術の活用で、顧客満足につなげていく
次なるステップや今後の展望はいかがでしょうか?
日本航空は経営目標の一つとして、「顧客満足No.1」を掲げており、そのために当然、お客様に常に新鮮な、最高のサービスを提供していかなくてはならないと考えています。その中で、カスタマーリレーションズを向上していく取り組みは非常に大事で、お客様とのタッチポイントであるモバイルが、今後ますます重要になってくるはずです。
例えば、最近の事例でいえば、国内線ではほとんどWi-Fiが使えるようになっていますが、そのWi-Fiを機内でもっと楽しく使っていただくために、Wi-Fi用のアプリを作成したり、羽田空港の出発ロビーで、手荷物検査の保安検査場のゲートが複数ありますが、時間帯によって混み具合のばらつきがかなりあるので、スマホで分かりやすく検査場の混雑状況を案内するサービスも始めています。そのような形で、いろいろなタッチポイントで、お客様により簡単・便利に飛行機に乗っていただくということは我々のミッションだと思っているので、今後もモバイルサービスを通じて、お客様の利便性向上のために、何か出来るかということを真剣に考え実行していきたいですね。
そのために積極的に新しいモバイル技術を取り入れていく、ということですね
そうですね。最新テクノロジーの活用というのは非常に大事だと思っていて、今回のモバイルコンバートもそうかもしれないですし、ビーコンやNFCなど、積極的に活用していきたいですね。お客様に今まで感じたことのないような体験で、非常に喜んでもらえることを一番にやっていきたいので、エムティーアイ様のような企業に、ITや先進のテクノロジーがいろいろある中で、我々にとって使いやすい形にチューニングし、提供していただける環境を作ってもらえるのがありがたいな、と。
我々の夢でもありますが、「世界で一番お客様に選ばれ、愛される航空会社」ということが芯にあるミッションなので、その実現に向けて、モバイルで一歩一歩新しい取り組みをやっていきたいと思います。
日本航空株式会社 草野様、吉田様
お忙しい中、取材にご協力頂き、ありがとうございました。
日本航空株式会社
JAL国内線航空券予約(英語版)スマートフォンサイト: http://sp.jal.co.jp/en/
取材日時:2016年4月
取材場所:日本航空株式会社様 本社会議室